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公開日:2024.01.31
更新日:2024.01.31
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中性脂肪とは?働きや基準値、中性脂肪を減らす方法などを紹介

健康診断や人間ドックで行われる血液検査の項目のひとつに「中性脂肪」があります。検査の結果、「中性脂肪が基準値より高い」といわれた場合、体の中で何が起こっていて、どのように対処すれば良いのでしょうか。
本記事では、中性脂肪の働きや基準値と、中性脂肪を減らす方法などについて詳しく解説します。

目次

中性脂肪とは、血液中に含まれる脂質のひとつ

中性脂肪は、血液中に含まれる脂質のひとつで体脂肪の大部分を占めており、肉や魚、食用油といった食品にも含まれている物質です。単に「脂肪」とも呼ばれます。
食品の脂肪のほとんどは脂肪酸という成分で構成されており、脂肪酸がさまざまな物質と結び付くことによって脂質を形成しています。食事から摂取する脂質のほとんどが中性脂肪です。余った脂質は中性脂肪となって脂肪組織や肝臓に貯蔵されており、必要に応じて分解されてエネルギーとして使われます。

中性脂肪というと「体に悪いもの」「太る原因」といった悪いイメージが先行しますが、実は体にとって重要な働きをする成分です。
主な働きを挙げてみましょう。

<中性脂肪の働き>
・糖質やたんぱく質を中性脂肪に変換して貯蔵し、必要に応じてエネルギーとして使う
・余分なエネルギーを皮下脂肪や内臓脂肪として貯蔵し、体温を維持したり内臓を保護したりする
・脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、K、E)や必須脂肪酸の吸収を助ける

皮下脂肪は、皮下組織に蓄積した脂肪のことです。太ももや腰回りなど、動きが少ない所につき、寒さや物理的な刺激から体を守る働きをしています。脂肪がついていることが外見からわかりやすく、ついた脂肪は指でつまむことができます。

時間をかけてゆっくりとついていく分、一度ついてしまうとダイエットや運動をしても落としにくいのが特徴です。皮下脂肪が増えすぎると、体形の崩れやひざ・股関節などの痛み、月経異常などを引き起こします。動脈硬化など健康を害するリスクを直接的に高めるわけではありませんが、QOL(生活の質)を下げる可能性があるため注意が必要です。

なお、皮下脂肪が蓄積した肥満を「皮下脂肪型肥満」といい、女性に多く見られます。皮下脂肪型肥満は、比較的上半身が細く下半身に脂肪がつくことで洋ナシのように見えることから、「洋ナシ型肥満」と呼ばれることもあります。

このように、中性脂肪は人間が活動する上で欠かせない成分です。

脂質については、以下の記事をご覧ください。

脂質とは?脂質の多い食べ物や摂取量の目安、おすすめレシピを紹介


中性脂肪値が高すぎる場合

中性脂肪値が高すぎる場合、健康への悪影響が懸念されます。どのような影響があるのか、具体的に見ていきましょう。

動脈硬化の遠因になる

中性脂肪が血液中において正常な値を維持できず、基準値を超えて増えすぎると「動脈硬化」を引き起こす遠因になります。

動脈硬化は、心臓から送り出される血液や酸素、栄養素を運ぶ動脈が硬くなって弾力が失われ、血管が狭くなったり、詰まりやすくなったりした状態の総称です。高血圧、肥満、運動不足、喫煙などの危険因子が重なって起こるといわれ、脂質の中ではLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の増加が直接悪影響を及ぼします。

中性脂肪は動脈硬化の直接的な原因にはなりませんが、増えすぎた場合は注意が必要です。中性脂肪値が高くなると、一般的に善玉コレステロールといわれるHDLコレステロールが減少し、悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールが増える傾向がある上に、その性質を悪化させるからです。

コレステロールについては、以下の記事をご覧ください。

コレステロールとは?摂取量の目安やコレステロールが多い食品を解説

生活習慣病の原因になる

中性脂肪が基準値を上回ると体脂肪として蓄えられる量が増えて肥満につながり、生活習慣病の原因になります。

生活習慣病とは、食事、喫煙、飲酒、ストレスなどの生活習慣によって発症する疾患の総称です。前述した動脈硬化をはじめ肥満や糖尿病、高血圧症、高脂血症、およびこれらの予備軍が該当します。症状のベースとなる生活習慣の改善を怠ることで、糖尿病やその合併症である失明などを引き起こすほか、がん、脳血管疾患、心疾患などを発症する可能性が高くなります。

脂肪肝からほかの病気に進行する可能性も

脂肪肝とは、肝細胞の30%以上に中性脂肪が溜まった状態です。脂肪肝の多くはメタボリックシンドロームを合併しており、糖尿病を合併する可能性もあります。放置すると動脈硬化の原因になり、肝炎、肝硬変に進行することもあります。


中性脂肪の基準値

中性脂肪の基準値は、50~149mg/dLです。検査機関によっては、下限を30mg/dLまたは40mg/dLとしている場合もあります。

空腹時(絶食10時間以上)で実施した採血で150mg/dL以上、食事時間とは無関係に採血する随時採血で175mg/dL以上の場合は、血中の中性脂肪の量が基準値を超えていることを表す「高トリグリセライド血症」と診断されます。

なお、「内臓脂肪の蓄積」に加えて、「高脂質」「高血圧」「高血糖」の3項目のうち2項目以上に該当する場合は、メタボリックシンドロームに該当するため、注意が必要です。数値の基準は以下のとおりです。

■メタボリックシンドロームの診断基準

内臓脂肪の蓄積 ウエスト周囲径(男性):85cm以上
ウエスト周囲径(女性):90cm以上
高脂質 高トリグリセライド血症:150mg/dL以上
低HDLコレステロール血症:40mg/dL未満
※いずれか、または両方
高血圧 収縮期(最大)血圧:130mmHg以上
拡張期(最小)血圧:85mmHg以上
※いずれか、または両方
高血糖 空腹時血糖:110mg/dL以上

中性脂肪が増える原因

中性脂肪は増えすぎても、減りすぎても体に悪影響を及ぼします。ここでは、より影響の範囲が広く、深刻な疾患を発症することも多い「中性脂肪が増える場合」に注目して、その原因を解説します。

エネルギーのとりすぎ

中性脂肪が高値になる最大の要因としては、エネルギーのとりすぎが挙げられます。
特に、脂質や糖質を多く含む食品や、果糖を多く含む果実、砂糖が入った飲料のとりすぎは中性脂肪の増加に直結するので注意してください。

アルコールのとりすぎ

摂取したアルコールは肝臓で代謝されますが、摂取量が多いと中性脂肪の合成が進みます。すると、多すぎる中性脂肪が血液中に漏れ出して中性脂肪値が高くなったり、中性脂肪が肝臓に溜まって脂肪肝の原因になったりします。
中性脂肪は、飲酒量が適量であれば最も低く抑えられ、適量を超えると摂取量とともに増加するため、飲酒量のコントロールが重要です。

食事回数の減少

人間の食事回数は、1日3食が基本です。このリズムは健康維持と深い関連があり、欠食して1日の食事回数を減らした場合、肝臓や脂肪組織での脂肪酸の合成が進み、肝臓の中性脂肪が増加します。
食事回数が少なくなると中性脂肪値は高くなりやすく、体脂肪が多く蓄積されます。

運動不足

運動不足も、中性脂肪値が上がる要因のひとつです。
食事からとる脂肪のほとんどは中性脂肪であるため、食事で摂取したエネルギーを消費する活動をしなければ溜まる一方だからです。


中性脂肪を減らすには?

増えてしまった中性脂肪を減らし、適正な数値を維持するには、どのような習慣と意識を取り入れれば良いのでしょうか。具体的な対策をご紹介します。

エネルギーの摂取量を適正にする

エネルギーの摂取量を適正にすると、中性脂肪の減少が期待できます。
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余ったエネルギーが肝臓で脂肪として蓄えられることによって中性脂肪値が上がってしまうため、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを整えることを心掛けてください。

まずは、標準体重をもとに適正エネルギー量を割り出し、摂取エネルギーと消費エネルギーをコントロールしていきましょう。
成人男女の標準体重は、BMI(Body Mass Index:体格指数)が22になるときの体重です。

<BMIの計算式>
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

<適正エネルギー量の計算式>
適正エネルギー量=標準体重(身長(m)×身長(m)×22)×身体活動量

身体活動量は以下のとおりです。

<身体活動量>
・低い(座っていることが多い):25~30kcal
・普通(軽い運動や散歩をする):30~35kcal
・高い(立ち仕事が多い、または活発に運動をする):35~40kcal

中性脂肪というと脂質を減らすことを考えがちですが、脂質だけを控えても中性脂肪の増加は抑えられません。エネルギーとして使いきれなかった余剰分から中性脂肪が合成されるため、糖質やたんぱく質にも注意し、適切な量を摂取することが大切です。

脂質(特に飽和脂肪酸)をとりすぎないようにする

2019年の国民健康・栄養調査の結果によれば、20歳以上の男性では約35.0%、20歳以上の女性では約44.4%が脂質をとりすぎています。人間が食事から摂取する油脂の成分の多くは中性脂肪であるため、脂質の摂取量を抑えるには、揚げ物など油脂を多く使った食品をとりすぎないことが大切です。

ただし、脂質は生命維持のために欠かせない栄養素であり、極端に排除することは望ましくありません。脂質は「量」だけでなく「質」に注意してとることをおすすめします。

脂質の質は、脂肪の構成要素である脂肪酸の種類に注目して考えましょう。
脂質は、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類に分類できます。このうち、不飽和脂肪酸は植物油や魚の脂に多く含まれるもので、血液中のコレステロール濃度や中性脂肪を下げ、動脈硬化につながる血栓ができるのを防ぎます。
一方、飽和脂肪酸は、動物性脂肪やパーム油などに多く含まれ、とりすぎることによってLDLコレステロールや中性脂肪を増やすことがわかっています。

中性脂肪値を適正に保つため、飽和脂肪酸を含む動物性脂肪やパーム油などは避け、不飽和脂肪酸を含む植物油や魚の脂などを積極的にとりましょう。

食物繊維を意識的にとる

食物繊維には、食後の糖質の吸収を緩やかにすることで血糖値の上昇を抑え、中性脂肪の上昇を抑えたり、中性脂肪の値を下げたりする働きがあります。海草、きのこ、こんにゃくなどをとる量を意識的に増やしましょう。

食物繊維については、以下の記事をご覧ください。

食物繊維の多い食べ物とは?適正摂取量やおすすめの食べ方を解説

アルコールは適量にする

適量を超えた継続的な飲酒は中性脂肪を増加させ、肥満や高血圧の原因になることがわかっています。血液中の中性脂肪の量が基準値を超える高トリグリセライド血症から急性膵炎になるリスクも高めるため、適量を意識してください。
具体的には、純アルコールの摂取量を女性20g、男性40g程度までにとどめると良いでしょう。

適度な運動を継続する

適度な運動は、血中の中性脂肪を減らします。脂質異常症の場合は、ウォーキングや早歩き、水泳といった中強度以上の運動を1日合計30分以上、毎日行うことが望ましいとされています。
体調に不安がある場合は、医師に相談してから運動を行うようにしましょう。


食事の脂質量を把握できる冷凍宅配弁当

毎日の食事の準備に悩んでいる方や、忙しくて料理をする時間が取れないという方は、エネルギー300kcal以下、食塩相当量2.0g以下、野菜使用量100g以上(芋類、きのこ類、海藻類、豆を含む。生鮮換算)の冷凍宅配弁当「気くばり御膳Ⓡ」をご活用ください。

エネルギー量や食塩相当量だけでなく、糖質、たんぱく質、脂質の含有量もウェブサイトで確認できます。また、電子レンジで温めるだけですぐに食べられ、後片付けの手間がないのもポイントです。

実際に購入した方にも、「しっかりした味と食感で満足です」「我が家ではとても重宝しています」と好評です。

気くばり御膳Ⓡ脂質を控えたい お試し4食セットについては、以下のページをご覧ください。


中性脂肪を落とすなら、食事の見直しと適度な運動が有効

中性脂肪値が高くなる原因には、エネルギーやアルコールのとりすぎ、食事回数の減少、運動不足などがあります。中性脂肪値が高くなると、動脈硬化や生活習慣病、脂肪肝などを引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
健康診断などで中性脂肪の増加傾向に気づいたら、食事の量と内容を見直し、適度に運動して、中性脂肪値の改善に努めましょう。


血液中の中性脂肪が多い原因は?
エネルギーやアルコールのとりすぎ、食事回数の減少、運動不足などが考えられます。食べすぎや飲みすぎを控えて、3食バランス良く食べ、適度な運動を行うことで改善が期待できます。
中性脂肪値の目安は?
中性脂肪値の基準値は、50~149mg/dLです。検査機関によっては、下限を30mg/dLまたは40mg/dLとしている場合もあります。

監修清水加奈子
管理栄養士、国際中医薬膳師、国際中医師。栄養学・中医学・薬膳の専門知識を持つフードコーディネーターとして、多数のメディアでダイエットレシピの提案や監修で幅広く活躍中。
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