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公開日:2024.08.23
更新日:2024.10.01
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高齢者の食欲不振の原因とは?リスクや改善方法を紹介

年齢を重ねるにつれ、食欲不振になる人は少なくありません。食べる量が著しく減ったり、食への興味関心が薄れて同じ物だけ食べ続けたりすると、必要な栄養素が不足して健康に影響を与える可能性があります。

食欲不振を自覚した場合、あるいは身近な人の変化を察知した場合には、正しい知識にもとづいて早めの改善を目指しましょう。
この記事では、高齢者の食欲不振の原因とリスクのほか、おすすめの改善方法などを紹介します。

目次

高齢者が食欲不振になる原因とは?

高齢者が食欲不振になる原因は、年齢に起因するものと、疾患に起因するものに分けられます。代表的な例は以下のとおりです。

年齢に起因する食欲不振

年齢に起因する食欲不振には、いくつかのパターンがあります。主なパターンは、以下の4つです。

・運動不足になる
個人差はありますが、年をとると基本的に活動量が低下します。体力が落ちて若い頃のように動けなくなったり、仕事を引退して通勤や外回りが減ったりすることが原因です。趣味を持たない人や人付き合いを好まない人の場合、仕事を通じた社会とのつながりがなくなると外出の機会が激減し、一日をほぼ家の中で過ごすことも増えるでしょう。体を動かさなければエネルギーの必要量は減り、食欲がわきません。

・基礎代謝量が減少する
通常、加齢とともに基礎代謝量は低下します。基礎代謝とは、生命活動を維持するために無意識に行っている「呼吸する」「心臓を動かす」「体温を調節する」といった活動で消費される最低限のエネルギーのこと。基礎代謝が高くなれば、寝ているときの消費エネルギーも高くなります。
しかし、基礎代謝が低いと、とった栄養素が消費されずに残るため、食欲不振を引き起こす可能性が高くなるのです。

・噛む力や飲み込む力が低下する
口に入れた物を噛んで飲み込む「嚥下」は、食事をとるために欠かせない動作です。年齢を重ねると、嚥下に必要な舌や咽頭の機能が低下し、食道ではなく声帯に食べ物が入り込む誤嚥によって食事が喉につかえたり、嚥下が追いつかず水でむせたりします。誤嚥が起こると思うように食事がとれず、食欲が低下します。

・口腔環境が悪化する
高齢者の口腔環境は、歯の欠損や舌の筋力低下などによって乾燥が進み、虫歯や歯周病を引き起こしやすくなります。口の中に痛みや不具合、不快感があることで食べられる物が制限され、食欲不振につながります。

疾患に起因する食欲不振

疾患の影響で食欲不振になる場合もあります。代表的な例は以下の3つです。

・消化器官の病気
悪性・良性を問わず、消化器官のトラブルは食欲不振の原因になります。痛みや不快感などがなくても、食べた物をうまく消化できないことにより、食欲がわかなくなっている場合もあるため、注意が必要です。

・認知症
認知症が食欲に与える影響は人によって異なり、食欲が増して食べ過ぎる人もいれば、食べることを拒む人もいます。食べ物を認識できない、箸の使い方がわからない、好みを言葉にできない、味覚の異常といった症状があると、食に興味を示さず食欲不振になるケースが見られます。

・服用している薬の影響
服用している薬の影響で、食欲不振に陥ることもあります。まず考えられるのは、薬の副作用で腹部膨満や意識・感覚がはっきりしない状態などに陥り、食欲不振を引き起こしているケースです。
また、加齢により薬物の代謝や排泄の能力が低下し、睡眠導入剤や降圧薬などが効き過ぎているケースもあります。


高齢者の食欲不振のリスク

高齢者の食欲不振が続くと低栄養状態になり、筋力や骨量が減少します。骨自体ももろくなるため、ふらついたときに体を支えきれずに転倒すると、わずかにぶつけただけで骨折を引き起こすこともあります。

高齢者の骨折で特に多いのが、「太ももの付け根」「背骨」「腕の付け根」「手首」です。特に、太ももの付け根の大腿骨骨折は痛みが大きく、歩行困難や要介護になるリスクが高い部位です。
思うように動けない期間が長引けば、身体機能や認知機能が低下し、自立した生活が困難になるでしょう。

健康な状態と要介護状態の中間段階を指す「フレイル」を予防するためにも、バランスのとれた食事を3食しっかりとることが重要です。


高齢者の食欲不振の改善方法

高齢者に食欲不振の兆候が見られたら、要介護や寝たきりのリスクを防ぐため、早急に対策する必要があります。

といっても、無理矢理食べさせるのは望ましくありません。「栄養不足になるから少しでも食べて」と強制したり、怒ったりすると高齢者の負担になり、食事の時間を苦痛に感じてより食が進まなくなります。 そもそも、基礎代謝量が低下した高齢者は、1食450kcal程度とれていれば摂取エネルギー量は足りています。1食450kcal程度を目標とし、少しずつ食べる量を増やせるよう工夫しましょう。

ここでは、高齢者が食欲不振に陥った場合に試したい改善方法を、5つご紹介します。

かかりつけの医師に相談する

食欲不振の原因が疾患である場合、医師の診断のもとで適切な治療を受けるしか解決方法はありません。しかし、高齢者は痛みを自覚しにくく、受診が遅れがちです。

胃腸炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、がんなどの悪性疾患をできるだけ早期に発見するために、食欲不振以外に目立った症状がなくても、まずはかかりつけ医に相談してください。
胃カメラなどで明らかな疾患が見つからない場合でも、ストレスによる胃もたれや腹部膨満感が食欲不振を引き起こしているケースもあります。

かかりつけ医以外を受診する際には、薬の副作用で食欲が落ちている可能性もあるため、お薬手帳を持っていきましょう。

口腔ケアをする

近年、歯周病菌が糖尿病や心疾患、慢性腎臓病、呼吸器疾患、骨粗鬆症などの全身疾患と深い関わりがあることがわかり、口腔内の健康を維持することの重要性があらためて注目されるようになりました。
同時に、「食べる」「話す」といった口の機能が年齢とともに低下することにより、食欲や意欲が減退して要介護高齢者の自立性が低下することもわかってきています。

虫歯や歯周病、歯の欠損、入れ歯の不具合などは、やわらかい食品ばかりを好んで食べるようになったり、食べられる物や量が減ったりする原因になります。
高齢者が食欲を保つには、口の中の細菌や汚れを取り除くとともに、口腔機能訓練などによって口の機能を維持・向上させることが重要です。

<口腔機能低下症は歯科で保険治療が可能>
口腔機能の低下は、2018年から「口腔機能低下症」として、歯科での保険治療が可能になりました。また、口腔機能低下症の対象患者は当初65歳以上とされていましたが、2022年に50歳以上に拡大されています。
口腔機能低下症は、口の中の衛生状態や乾燥の度合い、噛み合わせ、舌と唇の運動機能、咀嚼機能、嚥下機能をもとに診断されます。口腔機能低下症と診断された場合も、機能訓練や生活指導、栄養指導などの改善プログラムを受けることによって、正常な機能を取り戻すことが可能です。
早期発見が重要なので、食べこぼしが増えた、滑舌が悪化した、薬が飲み込めないといった症状があるときは、歯科で検査を受けましょう。

規則正しい生活をして体を動かす

不規則な生活や運動不足は、食欲不振のもとです。規則正しい生活を心掛け、良質な睡眠をとって体調を整える必要があります。
併せて、生活の中に適度な運動を組み込むことも大切です。一人で外出するのが難しい高齢者は、送迎付きのデイサービスや、訪問リハビリテーションなどを利用して、運動の機会を作りましょう。

外に出掛ける体力や気力がある場合は、地域活動やボランティア活動などへの参加もおすすめです。社会に貢献できる機会があると生きがいが得られ、心身の健康につながります。家でじっとしているときより各段に活動量が増えるため、食欲もわいてくるはずです。

孤食を防ぐ

核家族化や単身世帯の増加によって、一人で食事をする「孤食」の高齢者が増えています。
孤食が続くと、食事のおいしさを誰かと分かち合えず、食事をする楽しみや味わいへの感動が減少します。そうすると、食事づくりのモチベーションが保てなくなり、低栄養になりかねません。

孤食を防ぐために、施設の食事サービスを利用したり、家に友人を招いたりして、会話しながら食事ができる機会を作ることが大切です。

食事を工夫する

どんなに食欲がない日でも、「これだけは食べたい!」と思えるような好物が食卓に並んでいると、思わず箸が伸びるものです。
栄養バランスを整えることはもちろん大切ですが、低栄養を防ぐには、まず栄養をとることを優先し、好きな物を食べましょう。特定の栄養成分を強化した栄養ゼリー飲料やスイーツなどで、カロリーを補給するのも手です。

喉につかえる、むせるといった機能低下のサインがあるときは、「刻む」「やわらかくする」「とろみをつける」「盛り付けを少量にする」といった工夫をすると食べられるかもしれません。
ただし、食事を楽しむには、色や温度、見た目も重要です。元の食材の色や形がわかる程度の加工にとどめ、食材の色を活かした盛り付けを試してみてください。


高齢者の食事の注意点

高齢者の低栄養を回避することは、健康寿命の延伸や介護予防の観点から重要です。以下の点に注意して食事管理を行いましょう。

各自の状態に合わせた工夫を行う

高齢になると、複数の慢性疾患を同時に抱える「多病」の状態になったり、体のさまざまな箇所に衰えを感じたりする人が増えてきます。
しかし、こうした症状の強弱は人それぞれで、食べられる物や量は抱えている疾患や不具合によって異なります。よって、各自の状態に合わせた工夫が必要です。

例えば、持病の関係で、特定の栄養成分を控える必要がある場合は、その指示に従うことを第一に考えなくてはなりません。
また、嚥下機能が低下していて誤嚥の危険がある場合は、あまり噛まずに食べられるやわらかい物や、喉ごしの良い物が食べやすいでしょう。歯や入れ歯、歯茎などに不具合がある場合も同様です。

栄養のとり過ぎにも注意する

低栄養を気にするあまり、食べ過ぎて過栄養の状態になることにも注意が必要です。

過栄養は、肥満症、糖尿病、高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドロームなど、重大な疾患の原因になる生活習慣病を引き起こします。
高齢者の過栄養が生命予後に及ぼす影響が成人と同等か否かは不明な点もありますが、欧米では過栄養とフレイルに関連性があるとの指摘があり、自身の活動状況に見合った食事を心掛けることが大切です。

環境や嗜好による食事内容の偏りを防ぐ

住んでいる場所の地理的な条件や過疎化の進行度、あるいは老老介護で要介護者から目が離せないなどの個人的な要因によって、買い物に苦労する高齢者は少なくありません。
買い物に行く回数が限られると、家にある簡単な物で食事を済ませるようになり、栄養が偏るもの。買い物が難しい高齢者には、宅配サービスがおすすめといえます。

加えて、高齢になると魚や野菜などのあっさりした食べ物を好んで、肉を避ける傾向があることにも注意が必要です。動物性たんぱく質が不足すると、体や脳の機能が低下するフレイルを発症しやすくなります。
牛肉、豚肉、鶏肉などを意識的に取り入れて、フレイルを予防しましょう。


高齢者にもおすすめ!手軽に栄養がとれる冷凍宅配弁当

高齢者の食欲不振に気づいたら、電子レンジで温めるだけで数種類のおかずが食べられる、冷凍宅配弁当を試してみませんか。

ニチレイフーズダイレクトの「きくばりごぜん®」は、主菜と副菜がセットになっており、一度に少しずつ多様な食品をとりたい方にぴったりです。冷凍庫にストックしておけば好きなときに温めて食べられるため、近くに買い物をする場所がない方にも最適です。片付けが不要で、いっしょに暮らす家族の負担も減らせます。

実際に利用している方からも、「母が利用させていただいています。味付けも良く、種類も多くとても満足してくれています」「主に高齢の親の食事で、魚料理のセットを利用しています。主食の魚も良いと思いますし、副菜もとれ、種類、量ともにちょうど良いと思います」といった感想をいただいています。


高齢者の食欲不振は、早めの改善が重要

年齢を重ねると、若い頃に比べて食が細くなります。
活動量に見合った食事量であれば問題ありませんが、極端に少ない場合は食欲不振を疑い、手軽な冷凍宅配弁当などを活用して改善を目指しましょう。


高齢者が食欲不振になる原因は何ですか?
高齢者の食欲不振の原因は、疾患や年齢による体の機能低下です。年齢により低下する体の機能には、基礎代謝量、嚥下機能、口腔機能などがあります。
高齢者が食欲不振になったらどうすればいいですか?
まずはかかりつけ医に相談し、病気や薬の副作用が原因であれば治療を始めましょう。加齢による機能低下が原因の場合は、口腔ケアや生活習慣の改善、食事をとりやすくするなどの工夫から始めることをおすすめします。

監修清水加奈子
管理栄養士、国際中医薬膳師、国際中医師。栄養学・中医学・薬膳の専門知識を持つフードコーディネーターとして、多数のメディアでダイエットレシピの提案や監修で幅広く活躍中。
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